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2019.08.30 イベントレビュー

りらいあデジタルLabo 〜顧客体験のデザインとカスタマーサクセス〜を開催いたしました

2019年7月25日(木) 、りらいあコミュニケーションズHRDセンターにて、当社主催イベント第一回となる「りらいあデジタルLabo 〜顧客体験のデザインとカスタマーサクセス〜」を開催いたしました。

今後、ビジネスの新しい競争の軸になり得る、カスタマーサクセス。特にサブスクリプションサービスを牽引する企業にとって、顧客との関係を長く継続するために、カスタマーサクセスの実現が非常に重要です。近年ではカスタマーサクセスを実施する企業の成長性の高さが注目されているものの、決まったやり方や取り組み方法はなく、それぞれの企業の知恵の絞りどころだといわれています。

今回のイベントでは、スタートアップのカスタマーサクセスに取り組んでいる方々をお呼びし、「顧客体験のデザイン」という視点から、「どのような取り組みをしているか」や「どんなことを工夫しているか」といった、現場のリアルな事例・体験をお話いただきました。

当日は、BtoBのカスタマーサクセスに携わるセールス部門やマーケティング部門、現在カスタマーサクセスとして活躍されている方々を中心に、約60名の参加者の方にご来場いただきました。
ご参加いただいた皆様、誠に有難うございました。

オープニング
オープニングでは、飲み物を片手に、司会の和やかな乾杯の挨拶のもとイベントがスタートしました。
また、今回はTwitterのハッシュタグ(#RD_Labo)を使用して、リアルタイムに投稿していただくよう呼びかけました。

スタディセッション:
カスタマーサクセスにおける顧客体験のプロセス設計(HiCustomer株式会社 高橋氏)
事例セッション①:
ヤプリのカスタマーサクセス ー顧客体験の向上に向けてー(株式会社ヤプリ 市川氏)
事例セッション②:
カスタマーサクセスからエンタープライズサクセスへ(Wovn Technologies株式会社 山﨑氏)
事例セッション③:
チャットボットが創造する顧客体験とカスタマーサクセスの役割と取組み (りらいあデジタル株式会社 水上)

各セッションの内容をご紹介する前に、カスタマーサクセスの役割と目的について、改めてここで触れておきたいと思います。

カスタマーサクセスとは
カスタマーサクセスとは、「顧客を成功に導く」役割のことで、2000年代に顧客情報管理(CRM)の米セールスフォース・ドットコム社が提唱した概念です。具体的には、顧客と共にゴールや目標を掲げ、その達成に至るまでの成功体験づくりを支援する活動です。

こうした考え方が注目を集める背景には、「モノの所有から利用へ」の価値観の変化があります。「モノを買って所有する」ことにこだわらず、「利用期間に応じて対価を払う」というサブスクリプションの価値観が浸透し始めています。とりわけSaaS業界を取り巻くサブスクリプションの競争の激しさが増すなか、モノやサービスの収益を安定させるためには、継続して利用していただけるよう顧客に寄り添うことが不可欠です。

しかし、顧客のサポート体制を充実するうえで、単にカスタマーサポートを設ければ良いというわけではありません。従来のカスタマーサポートは問い合わせを待つ受け身の取り組みです。一方、カスタマーサクセスは積極的に関わることで、顧客との長期的な関係構築を目指します。サービスの利便性を高めるにあたり、対面での接触も含めて顧客が真に求めていることを見つけ、その実現方法を提案し続けることが必要になります。



スタディセッション:カスタマーサクセスにおける顧客体験のプロセス設計

登壇者:HiCustomer株式会社 高橋 歩氏
経歴 :新卒で入社したソフトバンク・テクノロジーでWeb分析事業の立ち上げた後、楽天にて分析データを使った意思決定やWebサイトの改善活動を先導。その後スタートアップでその知見を多くの企業に展開。これまでの事業運営の中でカスタマーサクセスの重要性を痛感し、自身もカスタマーサクセスに取り組みながら複数のスタートアップの支援を同時に実施。2018年7月よりHiCustomer第1号社員として、カスタマーサクセスマネージャーの方々と日々伴走中。

国内初のカスタマーサクセス管理プラットフォームを提供するHiCustomer株式会社様。サービスの継続率・解約率や、アップセル・クロスセル、顧客満足度・NPSなどのカスタマーサクセスチームの様々なミッションを達成しつつも、顧客体験のプロセスをどう設計していくのか、についてご講演いただきました。

「結果品質だけでなく過程品質、つまりプロセスへの配慮が重要になってきている」と冒頭で語った高橋氏。顧客へサービスを提供するにあたり、結果だけではなく過程における“体験”もサービスの価値に影響するからだといいます。顧客体験をサクセスロードマップに沿って、「1.顧客のサクセスの定義」「2.チェックポイントの設定」「3.登場人物の洗い出し」「4.標準タスクを時系列化」「5.誘導アクションの設定」の5つの手順から、実際のプロセスへの落とし込み方をご紹介いただきました。

なかでも、カスタマーサクセスでよく語られるというタッチモデルの話題が印象的でした。顧客のサポート方法でハイタッチ・ロータッチ・テックタッチ※があるが、顧客価値(≒契約サイズ)でサポート方法を決めつけてはいけない。例えば、規模の小さな顧客にも必要に応じてハイタッチを講じたり、規模の大きい顧客にテックタッチを使うことでタスクがスムーズに進むケースがあるといいます。つまり、タスクや目標を達成できるための手段は何かという観点で見極めることが重要なのです。「顧客が求めるのはそもそも“タッチ”ではなく、“課題解決”である」、そう高橋氏が強調すると、参加者の皆様が一斉にうなずいて納得していたのが印象的でした。

「プロセス設計ができていると、課題発見が容易になる。カスタマーサクセスの活動評価や改善検討において、どこに課題があるのかを判断できるようになることで、顧客体験の最適化が実現できる」と最後に締めくくり、スタディセッションを終えました。

※ハイタッチ … 訪問して提案や定例会を実施する、個別対応
 ロータッチ … トレーニングやワークショップなどを実施する対応
 テックタッチ … 自動通知メールやオンラインコミュニティを用いる対応

事例セッション①:ヤプリのカスタマーサクセス ー顧客体験の向上に向けてー

登壇者:株式会社ヤプリ 市川 昌志氏
経歴 :AppleにてBtoBtoC営業を経て、ブレインパッドにてデジタルマーケティングのソリューション営業。オラクルにてBtoC向けMAの立ち上げを推進し、カスタマーサクセスを経験。その後、ヤプリではカスタマーサクセスを立ち上げ、顧客の成功に向けた仕組み作りを担当。

株式会社ヤプリ様は、アプリをクラウドからワンストップで開発・運用・分析できるプラットフォームを提供する会社です。バリューの一部として掲げ、会社全体で取り組んでいるという「カスタマーサクセス」について、その立ち上げから得た学びを成功談と失敗談を交えながらお話いただきました。

「カスタマーサクセスは、社内の理解がないと潰れやすい部署である」――。決まったやり方や取り組みの方法がないからこそ、カスタマーサクセスを重視する企業文化を醸成しなければ、組織として淘汰されやすい。立ち上げ当初は、社内でのカスタマーサクセスの理解を深めることを徹底したそうです。「重要なことは、各役員、部署の役職者、そして全社員に向けたカスタマーサクセスの必要性を理解してもらうこと。そうすることで結果的に動きやすくなった」というお話は、同じ悩みを持っていた当社も共感できました。

また、カスタマーサクセスでの取り組みのなか、顧客へのアプローチとして、直近で注力している以下の3つをご紹介いただきました。

①カスタマー同士の交流を目的とした「Meetup」
②ユーザーの自走を目指した「トレーニング」
③「アプリのUI変更」を通じた要望の深堀

「ユーザートレーニングは顧客の課題がコンテンツと直結しやすいが、ユーザーのリテラシーにばらつきがあるため、内容を濃くすると自然と疑問が増えてしまうので失敗に陥りやすい」と語る市川氏。「そもそもリソースが限られている」という氏の言葉に参加者の皆様も思い当たる節がある様子で、「人員が足りていないなかで、どう工夫して自然にアップセルへ繋げられるか」等の話題がTwitter上で飛び交いました。



事例セッション②:カスタマーサクセスからエンタープライズサクセスへ

登壇者:Wovn Technologies株式会社 山﨑 健弘氏
経歴 :SCSKグループ企業にて、大手メーカーの基幹システムプロジェクトを担当。PMOやSEとして、約10年に渡りエンタープライズ企業の事業を支援。 Wovn Technologiesへ入社し、Wovn版カスタマーサクセスであるエンタープライズサクセス基盤構築を日夜奮闘中。

Webサイトやアプリを40ヶ国語に多言語化できるサービス「WOVN.io」を提供しているWovn Technologies株式会社様。カスタマーサクセスを進化させた「エンタープライズサクセス」について、その変遷と取り組みを共有していただくためご登壇いただきました。

当初、会社が目指すサービスレベルに見合う人員が足りていないなかで、カスタマーサポートからカスタマーサクセス、エンタープライズサクセスへどう進化させていったのか――。山﨑氏は、「当時はなかなか目標が達成できずにいた。そこで、改めてそれぞれの顧客の規模で最適な対応をしていけるようセグメントした結果、エンタープライズ向けの専任対応が必要だと分かった」と語ります。更に、セールスを含めた各部署の役割を細分化し、エンタープライズサクセスのタスクを各部署に移譲することで、顧客と自社の両者の目的達成の加速化が期待できると述べられました。

具体的な体験談では、「カスタマーサクセスメンバー個人のKPIにアップセルやクロスセルを持たせるのは難しい。アップセルが原因でチームメンバーの離脱が発生し、加えてチャーン※防止がおろそかになる可能性がある。」と強調。エンタープライズサクセスは「サービス導入」と「カスタマーサクセス活動」に徹することで、顧客サクセス・解約防止に集中して最適なUXを提供できる点がメリットとなる。逆にデメリットは、セールスにタスクを委任することで顧客接点が減少し現場感が低下する点だといいます。

カスタマーサクセスの役割を明確にし取捨選択することでリソース不足を防ぎ、引いてはチャーンを防ぐことに注力すること、ナレッジや提案事項における武器を用意し専門性を高めていくことが重要なのだと語られていました。

※チャーン…顧客がサービスを解約すること



事例セッション③:チャットボットが創造する顧客体験とカスタマーサクセスの役割と取組み

登壇者:りらいあデジタル株式会社 水上 竜也
経歴:2013年より、バーチャルエージェント®のナレッジ制作業務やUIディレクションに従事し、多数の案件を担当。2018年11月より、りらいあデジタル株式会社に参画。 同時にカスタマーサクセス部の立ち上げに携わり、社内外とのコミュニケーションを大切にしながら、チャットボットにおけるカスタマーサクセスの役割を明確化させるべく、日々試行錯誤中。

カスタマーサポートに特化したチャットボットサービス「バーチャルエージェント®」をメインとしたデジタル接客のサービスを展開しているりらいあデジタルは、2018年10月の法人設立と同時にカスタマーサクセス部を立ち上げました。スタートアップ時に学んだことや得られた気づきを、水上から紹介しました。

「カスタマーサクセスを語るにあたり、りらいあデジタルの顧客は、チャットボットを使っていただく利用者と、チャットボットを運用するお客様企業である」と水上は定義しました。チャットボットは会話形式のコミュニケーションを実現するツールであり、お客様企業のメッセージを利用者に届けることで、利用者の興味を広げ、離脱を防ぎ、次のステップへ進みやすくすることができるといいます。カスタマーサクセスを考えるうえでは、お客様企業と利用者の2軸の顧客視点が不可欠であると強調しました。例えば、お客様企業のメッセージが同じでも、キャラクターの表情や口調によって利用者の満足度に影響が出る。チャットボットというキャラクターを通して、「何を伝えるか」というよりも、「どう伝わるか」で利用者の評価が変わってしまうと説明。

お客様企業、利用者、加えてチャットボットという3者の関係は重要で、チャットボットをひとりの人間や社員として捉えた運用やサポートをする、それがりらいあデジタルの特徴だと語りました。

カスタマーサクセスの取り組みにおいては、チャットボットを導入することが目的になってしまうと、改善も利用者増も見込めない。そうならないために「どんなチャットボットにすべきか、会話を通じてお客様企業と一緒に言語化する。そうすることで両社の認識を合わせ、方針とゴールが明確になる。ゴールと紐づいた改善を繰り返し、お客様企業の成果向上へのステップアップを積極的に支援していく」とセッションを締めくくりました。



まとめ

お客様企業に対していかに成果を示し続けられるか、カスタマーサクセスの存在意義がめくるめくスピードで変化していると、全体を通して感じました。冒頭で「カスタマーサクセスは、あらゆる企業の知恵の絞りどころ」と綴りましたが、各社で紹介いただいた事例、当事者の経験や知見を、今回のイベントでは分かり易くご説明いただいたと思います。



イベント終了後にご回答いただいたアンケートでは、参加者の皆様から様々なご意見・ご要望が寄せられました。

各セッションの内容について、
「挙げられた事例が豊富で、他社の色々な考え方が聞けた」
「初心者向けでわかりやすかった」
「カスタマーサクセスのチーム立ち上げにあたってヒントを得られた」
との声をいただき非常に嬉しく感じております。

また、ご要望として「もっと他にもたくさんの企業例を知りたい」「同様の勉強会にまた参加したい」といった内容の他に、「質疑応答の時間が欲しかった」など時間に関する貴重なご指摘も多くいただきました。次回開催に向けてしっかりと改善してまいります。



 今後も定期的にイベント等を開催し、皆様と交流できる場を積極的に設けたいと考えております。今回ご来場いただけなかった方も次回は足を運んでいただけるよう情報を発信してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。